コーヒー好きなら聞いたことがある『サードウェーブコーヒー』ですが、具体的にどんなコーヒーを指しているのかご存知ですか?今まさにサードウェーブ真っただ中の時代ですが、コーヒーをさらに楽しむためにも、コーヒーのブームがどのように移り変わったのかご紹介します。
目次
サードウェーブコーヒーとは?歴史の流れを知ろう
『サードウェーブ』とは第3の波という意味で、“3番目のコーヒーのブーム”を表しています。1850~1960年ころまではファーストウェーブコーヒー、1970年代~はセカンドウェーブコーヒーが来て、現在はサードウェーブコーヒーの時代です。このコーヒーブームの流れを、詳しく見てみましょう。
まずはサードウェーブコーヒーまでのおさらい
ファーストウェーブ

コーヒーの第1次ブームとして訪れたのが、『ファーストウェーブ』です。19世紀の前半頃まで、コーヒーは嗜好品として貴族の飲み物という印象が強く、なかなか広まらずにいました。
しかしコーヒー豆の大量生産が可能になり、流通システムも発達したため、誰でも安くコーヒーが飲める大量消費の時代が到来したのです。
コーヒーは長期保管が難しいとされていたのですが、真空パックやインスタントコーヒーもこの時期に発明され、ファーストウェーブを作ることに大変貢献しました。ちなみにインスタントコーヒーを発明したのは、加藤サルトリという日本人なんですよ。
ファーストウェーブはコーヒーがポピュラーになるきっかけとなった時代ですが、それと同時に“質よりも量”が優先され、悪い言い方をすると「安かろうまずかろう」の時代でもあります。
このままではコーヒーをさらに向上させるのは難しいと推測され、考え方を改めるセカンドウェーブがやってくるのです。
セカンドウェーブ

1960年以降は「コーヒーを美味しく飲みたい」という風潮が高まっていて、そんな中1971年に『スターバックス』がアメリカのシアトルに誕生します。今では誰もが知っているコーヒーチェーン店ですが、セカンドウェーブの象徴なのです。
ファーストウェーブコーヒーに反発するように、浅煎りから深煎りコーヒーが人気と変わり、エスプレッソが好まれたのもこの時代です。
さらにこのエスプレッソをベースに、ミルクでアレンジしたラテ系のコーヒーが大ヒットし、コーヒーの苦みが苦手だった層の取り込みにも成功しました。
ファーストウェーブコーヒーは自宅で飲むものでしたが、セカンドウェーブは『サードプレイス』として自宅や職場以外の、居心地が良い場所でコーヒーを楽しむことが広まったのも大きな特徴です。
カフェで友人などとゆっくり過ごすという文化が定着し、大手コーヒーチェーンが広がりを見せ、ロゴ入りのコーヒーカップなどがファッションアイコンにもなりました。
サードウェーブはアメリカで誕生
そして2000年に入るころ、サードウェーブがやってきます。このころにはコーヒーというブランドがしっかりと確立し、さらに価値や個性を求めた新しいコーヒーカルチャーとして、現在も進行しています。
『サードウェーブ』という言葉の生みの親
サンフランシスコに、『レッキンボール』というコーヒー店があります。ここのオーナー兼ローストマスターである、トリシュ・ロスギブという女性が『サードウェーブ』という言葉を生み出しました。
本来は北欧の職人のようなバリスタや、マニュアルなどで画一化されたコーヒー店に対して使ったようなのですが、アメリカでもコーヒーのトレード方法や豆の品質などが変化したときでもあり、全部をひっくるめてサードウェーブと呼ぶようになりました。
高級嗜好品としてのコーヒーを確立
ファーストウェーブから比べるとかなり品質が上がり、ブランディングもされたコーヒーですが、さらにワンランク上のコーヒーが求められているのがサードウェーブです。
ワインなどのようにそれぞれの好みを重視し、本当に品質が高いものを提示することで、コーヒーファンを魅了し、コア層に向けて発信されることが増え、さらに奥深い世界となっています。
サードウェーブコーヒーの御三家
サードウェーブを席巻したのは、大手チェーンのように席数が多くゆったりとくつろげるコーヒー店ではなく、こじんまりとした席数も少ない店でした。1杯ずつハンドドリップなど丁寧に淹れてもらえ、贅沢を感じる飲み方が人気に拍車をかけました。
サードウェーブコーヒーの先駆けである御三家と呼ばれているのは、
の3店舗です。
日本ではブルーボトルコーヒーが有名ですが、アメリカでは後発組です。しかしどんどん頭角を現し、「コーヒー界のアップル」と呼ばれ現在世界中を虜にするコーヒーチェーンとなっています。
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日本でのサードウェーブコーヒーとは?
コーヒーのウェーブは基本的にアメリカを中心に巻き起こり、それがじわじわと日本に伝わってきました。日本でも一般市民がコーヒーを気軽に飲めるようになり、喫茶店が流行するなど同じブームを辿っていますが、アメリカより少し遅れてやってきています。
現にアメリカではセカンドウェーブの象徴となるスターバックスも、日本には1990年代の中ごろに上陸しているため、だいぶ遅れをとっています。
さらにブルーボトルコーヒーが日本に初出店したのは2015年と最近でもあり、今まさに日本ではサードウェーブコーヒーのブームが来ているのです。
日本のポートランド?清澄白河
ブルーボトルコーヒーは、東京の清澄白河に1号店をオープンさせました。このことで清澄白河にはカフェが続々とオープンし、『ぐるなび』のカフェジャンルで検索をかけると、飲食店全体の20%以上がカフェを占めています。
サードウェーブコーヒーの先駆けとして発展したアメリカのポートランドのように、おしゃれなコーヒー街として発展している地域です。
日本の喫茶店がサードウェーブに影響を与えた?
サードウェーブは1杯を丁寧に淹れるのが特徴で、これは日本の喫茶店では昔からあるスタイルでもあります。
ブルーボトルの創業者であるジェームス・フリーマンは、日本に旅行に来たとき、喫茶店でこのスタイルを見て自分も取り入れたと言っていて、サードウェーブには日本の喫茶店文化が影響しているのです。
サードウェーブコーヒーの3つのポイント

サードウェーブコーヒーの大きな特徴は3つあります。詳しく見てみましょう。
豆が『シングルオリジン』
シングルオリジンコーヒーとは、豆を生産国単位で分けるのではなく、品種や生産者、農場や精製方法など、単位を細かく分けてブランド化しているものです。
ブルゴーニュやボルドーなど、細かな地域で銘柄が分かれているワインの考え方ととても似ていますね。
コーヒーは同じ生産国でも農場ごとの特色が強く、土壌環境や気温などでも大きく味が変わります。これらを大切にし、いくつもの豆の種類がブレンドされていない、その農場だけのブランドとして確立しているのがシングルオリジンです。
『スペシャリティーコーヒー』とも呼ばれ、コーヒーの流通量全体の5%しかありません。このことで、今まで以上に高品質な豆を味わうことができるようになりました。
コーヒーの香りと酸味が楽しめる浅煎り
浅煎りのコーヒーはファーストウェーブの印象が強く、品質が劣るイメージとなっていました。しかし今新たに、高品質の浅煎り豆がブームとなっています。
浅煎りで抽出したコーヒーは酸味が強いのが特徴で、それでいて香りが豊かです。豆が持つ本来の味を楽しめ、個性的な味を作り出せるので、コアなコーヒーファンから好まれています。
コーヒー豆の生産者が守られた『ダイレクトトレード』というシステム
これまで生産者が栽培したコーヒー豆が、ロースター(生豆を焙煎して卸売り、小売りをする業者)に届くまでは、生産国の輸出会社と消費国の輸入業者を間に挟まなければいけませんでした。
しかしこれだと仲介料が発生し、生産者の手元には見合った対価が残らなかったのが現状です。
これが「安かろう悪かろう」の循環を生む根源でもあったので、サードウェーブでは生産国の輸出会社と消費国の輸入業者を挟まずに、生産者とロースターが直接取引できるようになった『ダイレクトトレード』というシステムが生まれました。
これによってコーヒー豆が不当に買い叩かれることもなくなり、生産者の生活基盤が守られ、品質の高い豆が作りやすくなったのです。
コーヒーはフォースウェーブの時代へ!?

アメリカにサードウェーブが来てからだいぶ経ち、そろそろ『フォースウェーブ』が来るのでは?といわれていますが、現在はまだ明確なトレンドは確立されていません。
しかし近年のアメリカではコーヒーの消費量が確実に伸びていて、市場規模も拡大の一途を辿っているので、この数年でフォースウェーブの到来もあり得るでしょう。
現在注目されているコーヒーの楽しみ方の例を挙げると、「誰が作った豆なのか」というサードウェーブに対し、「誰が淹れたコーヒーなのか」に移り変わってきていたり、浅煎り豆からカフェインレスやオーガニックに特化した豆に注目が集まっているなど、まだまだ先が広がりそうです。
新たなコーヒーのトレンドが次のコーヒーブームを席巻するかもしれませんので、見逃さないようにチェックしてみてくださいね。
コーヒーの波に乗って新たな世界を楽しもう!
コーヒーはファーストウェーブ、セカンドウェーブを経て、現在はサードウェーブが巻き起こっています。生産者を大切にしよりクオリティの高い豆を求めながら、今までにない変わったコーヒーを楽しむのが特徴です。
時代と共に移り変わるコーヒーのブームを知ると、より深くコーヒーを味わえますので、もうすぐ来るであろうフォースウェーブに備えて、サードウェーブを楽しんでみてください。