値上げの波が家計を襲っている昨今。ついにコーヒー関連のものも値上げされはじめています。どうしてコーヒーが値上げに巻き込まれているのか、どんなものが値上がりしているのかをチェックしながら、解説します。
目次
2023年5月からついに缶コーヒーが値上げ
原材料の高騰や円安などによって、さまざまなものが値上がりを続けている日本。2023年5月1日からは缶コーヒーが値上げとなり、話題を集めました。
容量が190g前後のショート缶と呼ばれるコーヒー缶は、希望小売価格から10円〜25円程度値上がり、これは1998年以来25年ぶりのできごと。
缶コーヒーは、コンビニコーヒーや専門店などとの競争激化が続いており、縮小傾向にある中での値上げとなりました。
これを機に、各メーカーコーヒー缶の在り方についてテコ入れを行っていき、差別化を図ろうと奮闘しています。
新しいフレーバーや人気アニメとのコラボなど、差別化戦略を活発化させながら、顧客獲得に向けて缶コーヒーの競争も激しさを増していきそうです。
コーヒーの値上げの理由はコーヒー豆の価格が高騰
25年ぶりの缶コーヒーの値上げに驚かされましたが、コーヒー関連の商品の値上げの根本には、コーヒー豆の価格の高騰があります。
現在、私たちの生活に寄り添う様々な商品が値上げに向かって進んでいて、これは原油価格高騰によってエネルギーや資材、物流費の高騰と、日本では円安に拍車がかかり、輸入品の値上げが続いています。
コーヒー豆も同じ理由で高騰していますが、実はコーヒー豆ならではの高騰理由があるのです。コーヒー豆が値上がりしている原因を解説します。
コーヒー豆の価格が高騰している原因は?
コーヒー豆が高騰している原因は、大きく分けると3つ考えられます。
まずはコーヒー豆の取引価格の決まり方、次にコーヒーの消費量が拡大していること、そしてコーヒーを栽培する環境についてです。
それぞれについて、どんな問題があるのか解説します。
コーヒー豆の取引価格の決まり方に要因あり
コーヒーは、コーヒーの木からとれる豆を加工して作られる商品です。
そのため、コーヒー豆の取引価格によって、コーヒー商品自体の価格も左右されることがしばしば。
コーヒー豆にはアラビカ種とカネフォラ種があり、ニューヨーク商品取引所やロンドン国際金融先物取引所にて取引されていて、投機目的の方も多くいます。
安定してコーヒー豆が栽培できる環境が続いていれば良いのですが、例えば台風が来るなど天災や、戦争などの人災でもコーヒー豆の取引価格に影響を与えてしまうことも。
近年世界では天災や人災が多く多発し、その結果、コーヒー豆の高騰が起きやすい状況になっているのです。
コーヒー消費の拡大
コーヒーはもともと、アメリカやヨーロッパなどの先進国が主な消費国でした。
しかし最近では中国やインドなどの人口が多い国もコーヒーを飲み始め、嗜好品として世界中で愛されるようになっています。
そのため、コーヒー全体の需要が拡大し、供給が追い付いていないという現状もあるでしょう。
コーヒー消費量は、2011年には約720万トンでしたが、2021年の統計では約997万トンを超えました※1)。
世界の人口増加に伴い、コーヒーの消費量も、今後拡大していくことが予想され、そのため価格の高騰が続いているという見方もあります。
※1)参考:調査データ|全日本コーヒー協会
栽培地が温暖化により減少
コーヒー豆が栽培できる環境には3つの条件があります。
- 平均気温が20℃前後
- 年間雨量が平均1500mm以上
- 1日や年間を通して15℃以下にならない場所
上記の3つを満たしているのが、「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道付近のエリア。
ブラジルやベトナム、コロンビアなどが有名ですが、これから地球温暖化がさらに深刻になると、コーヒーが栽培できる環境エリアが減っていくと予想されています。
また、価格変動の大きいコーヒーを栽培する農家が減ってきている人員問題も起きてきていて、ますますコーヒー豆の供給量は減少していき、コーヒー豆の高騰が続くでしょう。
コーヒーの値上げができないカフェは倒産へ
コーヒー豆の高騰で、さまざまなコーヒー商品も値上げを余儀なくされていますが、そんな中苦戦を強いられているのがコーヒーを提供するカフェです。
コロナ禍により、飲食店は客足が伸びず厳しい状況が続いていましたが、最近ではだいぶ客足が回復しています。
しかし、カフェの倒産件数は増えていて、2022年は34件、2023年に至っては、7月までで44件に達しているのです。※2)
これはやはりコーヒー豆の高騰に影響を受けていて、コロナ前は1キロ当たり300円台で推移していたコーヒー豆が、現在は1キロ700円を超えることもあります。
コーヒー豆が2倍以上に高騰しても、すぐにコーヒー1杯を2倍にすることは難しく、他の食材や人件費の値上げも重なっています。
上手く値上げができなかったカフェは倒産の道しかなく、この先も独自の価値を高められないカフェは淘汰されてしまう可能性があるでしょう。
※2)参照:2023年 7月報|帝国データバンク
これからもコーヒーを楽しむためにできることは?
コーヒー商品の価格高騰真っただ中ですが、悲観しているだけでは私たちのコーヒーライフが危ぶまれてしまいます。
この先もコーヒーを気軽に楽しめる世界でいてもらうため、私たちができることはあるのでしょうか。次の3つのポイントを、今一度考えてみてください。
コーヒー生産者と正当な取引ができるようにする
コーヒー豆の価格が、相場によって不安定になってしまうことがないよう、コーヒー生産者と正当な取引ができる仕組みづくりが必要です。
コーヒー生産者が過酷な労働条件の中、本意ではない取引価格でコーヒーが捌かれてしまわないよう、価値に見合った取引ができるようにと「フェアトレード」の理念が浸透し始めています。
この理念が広まれば、生産者の離農にもつながり、本当においしいコーヒーを広めることにもつながるでしょう。
フェアトレードの承認マークの付いたコーヒーを購入するなどの工夫をすれば、持続可能なコーヒー産業を応援できます。
地球を温暖化から守る
コーヒー豆が栽培できる条件が整ったエリアは、限られているのが現状です。そのため、地球温暖化でそのエリアが失われてしまわないよう、守っていくことが重要。
地球温暖化の大きな原因といわれている二酸化炭素ガスの排出量をカットするため、身近なことから始めてみてください。
例えば、なるべく自動車の利用を控えたり、エコバッグを持ち歩いてビニール袋の削減に努めたりなど、小さなことでもみんなで行えば大きな成果につながります。
コーヒー豆の品種改良に注力する
コーヒー豆は産地や栽培方法により、アラビカ種とカネフォラ種の2種類に分けられます。
アラビカ種は高値で取引されることが多いですが、価格の低いカネフォラ種のほうが栽培可能エリアが広く、病害虫にも強いという特性が。
今後より多くのコーヒー豆を栽培する方法として、コーヒー豆の品種改良に注力するのもポイントです。
「アラビカ種をもっと強いコーヒー豆にできないか」、「カネフォラ種の味わいをもっと繊細にできないか」など、コーヒー豆の改良ができれば可能性を広げることができるでしょう。
コーヒーの値上げは今後も続く可能性がある
コーヒー豆の価格の見通しを立てるのは大変難しいですが、さまざまな要因を考えると価格が下がっていくことは考えにくいです。
コーヒー豆の生産地での霜害がなく、生産量が増え続ければやがて価格も安定する可能性はありますが、しばらくは高値が続くかもしれません。
今はまだ当たり前のように、1杯を気軽に楽しめているコーヒーも、今後はなかなか手が出しにくい嗜好品になってしまうことも。
そうならないよう、コーヒー豆の現状をしっかり把握し、一人ひとりができることに向き合っていきたいですね。